【対談01】『バレンタインショックで生命保険の募集がどう変わったのか(前編)』

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法人契約に関する税制改正

<ゲスト>
榊原 正則 『保険税務のすべて』編集長

<スピーカー>
中原 祐治 株式会社Total Life Design(トータルライフデザイン)代表取締役

対談内容

(中原)皆さまこんにちは。トータルライフデザインの中原と申します。本日は新日本保険新聞社編集長の榊原さんにお越しいただきました。榊原さんには、弊社の顧問をしていただいてます。本日はバレンタインショックで生命保険の募集がどう変わっていったのかということをテーマにいろんな質問を先生に投げかけていきたいと思います。
榊原さんよろしくお願いします。

(榊原さん)よろしくお願いします。
昭和55年に今の会社に入って今年もう40年間、生命保険、あるいは損害保険の業務に携わる専門誌あるいは出版物の編集等を担当しています。それから昭和61年度版から年度版で発行している「保険税務のすべて」の編集責任者に携わっており、これについては今年で34回目の改訂を加えたということになります。こういったキャリアがあっていろんなところからご依頼を受けて業界動向であったり、あるいは今日もメインのテーマになると思いますけれども保険税務に関わるものであったり財政内容についてお話しすることも多くなっています。よろしくお願いします。

(中原)先生よろしくお願いします。

(榊原さん)よろしくお願いします。

(中原)それでは榊原さん、2019年の6月度に法人契約に関する税制改正が起こったと思うんですけども、特に定期保険の税制改正に関してのおさらいからまずお願いできればなと思うんですが。

(榊原さん)わかりました、昨年例ですね。この改正の前後から、全国でずっとお話をしてきてるんですけど、決まった後もいろんなとこでお話してるんですけども、中原さんからみてですね、逆に非常に大きな改正だったんだけど、こういった中で理解されてないなと印象を受けられた販売している方、あるいはお客さんも含めてですね、そういった印象を受けるのはどうなんですか。

(中原)そうですね、先生がおっしゃるとおり、今回の税制改正で4パターンに分かれてかつ期間に応じても資産計上の仕方が変わっていったりとか、結構複雑な改正だったと思うんですね。なので意外と保険を売っている募集人の人も、当然お客様もなんなら税理士の先生も意外とこの税制理解してないような方って多いんじゃないかなって思うんですね。
今日もしよかったら勘違いされやすいようなところとか、ここちょっともう少し詳しく言わないとわかんないよなってところを先生の方でちょっとおさらいいただけたらなと思うんですけども。

(榊原さん)わかりました。

(中原)はい、よろしくお願いします。

(榊原さん)全体的なおさらいをした上でですね、間違いやすい、あるいは誤解されているポイントといったものについて、お話していきたいと思います。
今お話になった定期保険の改正という言い方もあるんですけど、今回は定期保険と第3分野保険、がん保険であったり医療保険であったり、こういった第3分野保険、言い換えれば保険料が損金になる、そういう保険の種類についての法人契約の改正だったんですね。
ですから定期保険、および第3分野保険にかかる改正であったというとこも大きなポイント。裏返せばそれ以外の保険種類は変わってないということですね。

(中原)ちなみに先生、今回損金が落ちるというと、養老保険なんかもいわゆる損金半分で落ちる保険の種類だと思うんですけど、養老保険に関しては改正がなかったということでよろしいですよね。 

(榊原さん)改正はなかったですね。

(中原)これはなんかなかった理由とかあるんですか。

(榊原さん)なかった理由はというか途中ですね、非常に今回の改正が大きな改正であるということが業界に伝わったと。それでもってここまでやるんだったら、養老保険について、あるいは保険の種類全部についてやってもいいんじゃないかという声が一部から出ました。

(中原)出たんですね、実際。

(榊原さん)出たんだけども、基本的に今回は定期保険、いろいろ話題になってた保険があったんでそういったものをメインとしてやるんで養老保険で今言われた二分の一福利厚生費で落ちる、福利厚生プランについては普遍的加入とか、加入要件が非常にシビアであるというのもあるのでそこは今回は改正しない、

(中原)見送ると。

(榊原さん)といったかたちになったわけですね。声としてはあったので、将来的に全然ないかっていうとなんともいえないですけどもね

(中原)今回はその話題になった保険を中心に。なるほどなるほど。ありがとうございます。

(榊原さん)今回の改正のポイントっていうのは今もちょっとお話があったので、大きく言うと4つに分かれるんですね。定期保険、第3分野保険、こういったものが一つのくくりになっていまして。
その中で最高解約返戻率。要するに保険期間の中で一番払い込んだ保険料に対してその時点の解約返戻金額の割合がどれくらいになってるのか、これが解約返戻率ですよね。それがもっとも高くなる。その最高解約返戻率に応じて保険料の処理、取り扱いの区分を変えたっていうのが今回の改正ですね。

(中原)結構その最高返戻率という考え方自体が結構新しい考え方なんですかね。

(榊原さん)ですね。後ほどまたお話しますけども、その最高解約返戻率というものを持ち出してきた背景は、本当はベースは基本をいうともっと違う考え方があるわけ。

(中原)あぁそうなんですね。

(榊原さん)ただそれはお客さんにはわからないというので、お客さんが分かって明確になる。業界としても示せる数値ってことで最高解約返戻率を主要として使ってるってことですね。そんな中でまず最高解約返戻率が50%以下。これは法人契約で法人が受け取るという形であれば、支払ってる保険料は全額損金でいいよ、資産計上しなくてもいいよ、という形になっています。
ただ、これも注意点としていうのは全額損金でいいよっていうのは例えば保険料を平準払いで払うケースをイメージしているわけですね。それは払った保険料全額損金でいいよってことになりますけども、短期払いする、保険期間30年だけど10年で払うよってなってしまうと当然今年払う保険料の中には払い込み満了後の保障にかかる部分の保険料が入ってますからそれは今期の損金がダメだよ、ここの考え方を間違ってはいけないということになりますね。

(中原)結構その辺は勘違いされがちというか。

(榊原さん)うん。ちゃんと理解されていればね当然そんなものはならないよね、ってなるんですけど、そういう理解がないと、そういったものも含めて全額損金というんだという思い違いがあるかもしれないですね。

(中原)そうですね。

(榊原さん)それをいわゆる最高解約返戻率が50%を越えるケースについて保険料の一部は一定期間、あるいは資産計上しなければいけないという期間が設けられるということですね。
それがまた大きくは50%超のところの2つに分かれます。最高解約返戻率が85%以下50%超、85%以下のゾーンと、それが85%を越えるゾーンの大きく2つに分かれるんですね。その50%超85%以下のところについてはまたさらに2つに分かれる。

(中原)それだけ聞いても結構複雑な税制改正だったんだなという感じですね。

(榊原さん)そうですね。その50%超70%以下までの部分と、70%超85%以下というものに2つに分かれてるんですね。ただ、この2つの区分の中のその保険料の取り扱いの仕組みというのはほぼ似てる。どういう風になってるかといったら一定の保険期間があります。保険期間の開始からその保険期間の4割の期間、10年であれば4年ですね。その期間においては支払い保険料の一定割合を資産計上するんですよという仕組みになってますね。
その一定割合というものが70%以下の区分と70%超85%以下のところでまた違っている。50%超70%以下のところは支払い保険料の×0.4ですから4割を資産計上する。逆にいうと6割を損金にする。

(中原)損金ですね。

(榊原さん)で、最高解約返戻率が70%超85%以下の区分になるとそれが逆転するってことですね。

(中原)4割を損金にして、6割を資産計上するってことですね。なるほどなるほど。

(榊原さん)そして今回の取り扱いの仕組みで、資産計上したんだけども、それって契約が消滅する、あるいは死亡が発生する、そういった保険事故が発生するまでずっと積んでおくのかっていうとそうではないんですね。その資産計上した金額を取り崩す期間、取り崩し期間というものが設けられています。それは保険期間の最初から7.5割の期間を終えた以後の期間、ということは残りのこれ4分の3ですね。残りの4分の1期間でそれを期間の経過の応じて取り崩していくというこういう仕組みになっているんですね。

(中原)つまり払った保険料よりも大きな損金がでるっていうそういうイメージですね。

(榊原さん)そうですね。で、ちょっと忘れましたけども資産計上期間があります。最初4割でしたけど。

(中原)4割。

(榊原さん)で、取り崩し期間が残り4分の1。となると間がありますよね。

(中原)その40%を超えたところですね。4割期間を超えた。

(榊原さん)そうです。4割期間を超えた。ここはどうなってるというと、ここからは支払った保険料は全額損金にすればいいです。でもこの資産計上した金額の取り崩しはまだ始まりません。
ですから、これがこう、払った保険料が全額損金になる期間があって、取り崩し期間になるとそれプラス資産計上した金額の取り崩し部分がありますから、今中原さんおっしゃったように払った以上に損金が発生していくといった考え方になっていく。

(中原)なるほどなるほど。結構この現場では3つの期間に応じて、資産計上のやり方が変わってくるってことを結構理解していないような募集人、もっというと税理士の先生も結構いらっしゃったりして、こういうところが結構今回の改正だと意外と複雑な改正だったんだなと。

(榊原さん)これはだから今回の改正は従来と違った概念が入ってきてるのがまさにそこなんですね。例えば、今お話ししたように50%超85%以下の取り扱いですとなんとなくイメージ悪いじゃないですか。

(中原)はい、そうですね。

(榊原さん)昔、長期平準定期保険というのがありましたよね。前半6割期間は保険料の2分の1を損金参入して、2分の1は資産計上です。その期間を終えたら保険料は全額損金になって、この資産計上期間の取り崩しがある。保険期間の一定期間、保険料の一定割合を資産計上するっていう考え方。これは従来の法人契約の生命保険の一般的な考え方だったと思うんですね。

(中原)そうですね。

(榊原さん)ここのところは、あんまりややこしくするとですね、販売する保険会社の人がですね、あるいはお客さんも分からないっていうんで簡便なルールにしたんですね。

(中原)なるほどなるほど。

(榊原さん)ここについては簡便性を引き継いだ形の取り扱いになってる。先ほどいったようにイメージが合わないよっていうのは、従来は、よくお話するのはですね、資産計上期間があります。で、それが終わると取り崩し期間があります。こういう三角形になってるんですね。

(中原)なるほど。そうですね、三角形ですね。

(榊原さん)先ほど説明したことになると今回違うんですね。資産計上期間があります。で、この資産計上額は一定期間そのまま取り崩しせずに資産計上しておくんです。

(中原)要は払った金額は全部全額損金になってるタイミングってことですね。

(榊原さん)そうそう。でも資産計上期間は取り崩しが起きないんでこれはまっすぐ、資産計上額は継続してる。一定期間すると取り崩しが始まるという、こういう台形になってるんですね。

(中原)なるほど、台形ですね。

(榊原さん)三角形が台形になったっていうイメージが従来の所と大きく変わってる。

(中原)確かに。図形にして考えるとすごくわかりやすいですね。

(榊原さん)そうですね。だから改正案が出てきたときいろんな所で説明するときに、図で三角形から台形ですよってお話をすると、あ、なるほど、って言われる方も非常に多かった。あんまり何回も言うとあれですから、基本はひとつはそこ。
で、もう一つあるのは最高解約返戻率の85%を超えるような商品、もともとこういったところがどうなのって話だったんですね。保険料が全額損金、あるいは二分の一損金になってるけども返戻率が非常に高いと。で、こういったものについては、こういう簡便なルールではなくて非常に厳密な形にするよと。

(中原)そうですね。ここも結構複雑ですよね。

(榊原さん)そうなんです。本来資産計上すべきものを厳密に算定して、それはちゃんと資産計上してもらうよっていう考え方になっているということですね。

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